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No237.Dog Ear #28(キャリア再考)

2015/10/03 20:42

々に良い映画を観ました。自分のキャリアにつまづいたり迷ったりした時、何度も見直したいです。

Bill Cunningham New York」は、80歳を超えても現役で活躍する、New Yorkのファッション写真家、Bill Cunningham(ビル・カニンガム)を、インタビューと映像で綴るドキュメンタリー作品です。
BCNY

ファッションが何の役に立つ?という否定的な声に対し、
「ファッションは鎧なんだ。日々を生き抜くための。手放せば、文明を捨てたも同然だ。」
と語るビル。

華やかな社交パーティーに足を運び、流行ファッションを撮影しているのに、自分の服はオンボロだし、キッチンもない古びたアパートに住んでいる。
「金をもらわなければ、口出しされない。自由より価値があるものなんかないよ。」
という言葉に、ビルの一貫したプロ倫理観を感じました。

以下、若干ネタバレな感がありますが、心に残ったシーンや、その背景補足説明など。
本人たちの口から発した言葉を、やはりドキュメンタリー映画で直に、皆さんに鑑賞してほしいです。



<Billの略歴と生活の様子>
1929年生まれで、映画公開時の2010年現在でも、バリバリ現役ファッション・フォトグラファー。典型的な労働階級出身で、ハーバード大学中退。Billは敬虔なキリスト教信者で、毎週日曜に教会に通っている。

ファッション業界誌大手のWWD誌(ウーマンズ・ウェア・デイリー)で、一時期コラムニストとして活躍するが、WWDとの確執が原因で離れ、その後はNew York Times紙に所属し、現在に至る。

NYのストリート・ファッションや、社交パーティー会場、ランウェイショーなどを素材に、ファッションの旬を写真に記録している。

テレビを持たず、映画も観ないので、被写体がセレブなのか、一般人オシャレさんなのか、Billには見分けがつかない。記録する価値があるか否かだけで、カメラのシャッターを切る。

カーネギー・ホール・ビルのおんぼろアパート(気鋭の芸術家が多く住んでいたことで有名)に、今も住み続ける。キッチンなし、トイレ・シャワーは共同。過去作品のキャビネットで溢れかえる部屋では、雑誌の束の上にマットレスを敷いて寝起きしている。

BillCunningham_03.png

ブルーのコートがBillのトレンドマークだが、実は清掃作業服。アナログ・カメラを首から下げていると、擦れてジャケットが破けてしまうため、それを防止するためだとか。NY市内は自転車で移動。
フランス文化省が送る「芸術文化勲章」(L'Ordre des Arts et des Lettres)の授賞式でも、この清掃作業服のままで授与。

BC-on-the-street



<Bill本人、および知人のインタビュー抜粋・抄訳>

WWDとの決別について、知人たちの証言。

「WWD誌との間の確執は、倫理観にかかわる問題が原因だった。In or out(流行か古いか)リストに、彼の写真が使われた。だが、彼の視点では、すべてのファッションがインだ。だから記録する。」

「(Billは)とても優しい人。悪意がある写真は見たことがない。もちろん撮ろうと思えば、いくらでも撮れたけど。」

「驚くほど自分らしく着こなしている女性たちを、モデルの写真と並べてみせた。でもWWDはコピーを変え、彼女たちを笑いものに。」

「誰かを比べたり、見た目に優劣をつけることが、彼には耐えられなかった。」

「彼はものすごく動揺し、傷ついた。もう立ち直れないほど、自分を恥じ、取り乱していた。その写真の女性たちをとても心配していた。それがWWDとの最後の仕事に。」


WWDとの決別後、NY Times勤務と掛け持ちで、ファッション雑誌(現在は廃刊)も手掛けた追憶と、本人の証言

「You see? If I don't take money, they can't tell me what to do, kid. It's the best key to all things. Don't touch the money.
金をもらわなければ、口出しされない。すべてに通ずる鍵だ。」

「Money is the cheapest thing. Freedom is the most expensive.
自由より価値があるものなんかないよ。」


Billはそう言って、雑誌社から支給された報酬の小切手を一度も換金しなかった。「無給なんだから、好きにさせてもらうよ。」と。

パーティー会場で撮影する際に、パーティー会場でサーブされる食事やお酒は一切手を付けない主義。水一杯さえ飲まない。何か食べてからパーティー会場に行く。

「(勤務先の)NY Timesの看板を汚せない。」

「置かれた状況と距離を置くと、より客観視できる。何を客観視するかは別として、僕には有効だ。」



NYの社交界について語る、Billの知人たちの証言

「伝統的だったNY社交界は、次第に定義が難しくなった。最新の定義は、笑顔を振りまく娘から、年配のWASPまで全員だ。」

「ある廃刊した雑誌の見出し: 『社交欄に載らないけど生きていけますか?』
(社交界の)多くは、そんな思いに捕らわれている。
NYではステータスが全てだ。住みやすい街だとは思わないが、面白いのは、集まる人間の多くに野心があるところだ。
NYの人々は押しが強いが、自分を売り込みはしない。恩恵にあずかろうと、そっとBillに近づく。」


こんなNY社交界に顔なじみの多いBillが、プロ意識を貫く覚悟を吐露。

「ファッションに否定的な声もある。『混乱を極め、問題を抱えた社会で、ファッションが何の役に立つ?事態は深刻だ』と。
だが要するに、ファッションは鎧なんだ。日々を生き抜くための。手放せば、文明を捨てたも同然だ。」

「誠実に働くだけだ。それがNYではほぼ不可能だ。正直でいることは、風車に挑むドン・キホーテだ。」




Billのキャリアとライフスタイルは、「清貧」と「勤勉」を是とするキリスト教の教えに沿っている、とも言えます。
が、むしろ自分なりのプロ論と、自分の好きなことだけを突き詰めていった結果、自然と要らないものがそぎ落とされていっただけなのかもしれません。

Billの笑顔がとても印象的で、ホンキで、こんなおじいちゃんが身近にほしいです。

BC-big-smile

レンタルDVDやNetflixなどで視聴できますので、皆さんも是非!



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